「万引き家族」、「ベイビーブローカー」に続き、 是枝監督作品3作目の視聴『怪物』
第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞(坂本裕二さん)とクィア・パルム賞を受賞した作品ですね。
是枝監督の作品性、空気感。好きなんです。なんとなく全体を煙に巻くような展開で、伏線も張り巡らされて先が気になって仕方なくなるので、ついつい前のめりに見てしまうんですよね。
ただし、見終わった後スッキリできたためしがない。
今回の怪物もまたモヤっとさせられて終わるかなーと思ってたんですが・・・。
『怪物』良かったです!
ただ、案の定1回目見終わった時は正直「え?」だったんですけど(笑)
後から2回目見直して、最終的に「え?」って思う気持ちを超える感情を頂けたので。。。
そんな訳で『怪物』感想です。
概要と冒頭あらすじ
概要
劇場公開日 | 2023年6月2日 |
監督 | 是枝裕和 |
脚本 | 坂元裕二 |
音楽 | 坂本龍一 |
上映時間 | 126分 |
- UNEXT(レンタル300pt)
- Amazonプライムビデオ(レンタル500円)
- Hulu(レンタル550円)
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冒頭あらすじ
シングルマザーの麦野早織(安藤サクラ)は小学5年生になる湊(黒川想矢)と二人暮らし。
最近、一人息子の湊の様子がおかしい。自分の脳は豚の脳に移植されたと言い出したり、乗っていた車から急に飛び出したり、砂の入った水筒を持って帰ってきたり。
息子が学校でいじめられているのでは?と心配した早織は、湊の言葉から担任を疑う。小学校へ行き真実を追求しようとするのだが、学校側から納得する答えは得られない。挙げ句の果てには、息子が同級生をいじめをしていると言われてしまう。
真実を知りたい早織は懸命に事実を追求しようとするのだが・・・。
登場人物(キャスト)
登場人物 | キャスト |
麦野 湊 小学5年性 | 黒川想矢 |
麦野早織(湊の母親) | 安藤サクラ |
保利道敏(湊の担任の先生) | 永山瑛太 |
星川依里(湊の同級生・友達) | 柊木陽太 |
伏見真木子(湊の学校の校長) | 田中裕子 |
映画『怪物』感想 ネタバレあり
別々の3人の視点から展開される物語
この映画の面白いところは、安藤サクラが演じる湊の母視点、永山瑛太演じる湊の担任視点、湊の3人の視点で物語が展開されるところです。
3人の視点から描くことで、話が進むにつれて絡まった糸がするすると解けるような気持ちよさを味わえます。
まずは、物語序盤、”怪物だーれだ”のキャッチコピーの罠にまんまとハマり、「一体誰が湊をいじめているの?湊に何があったの?」ってすべてが怪しい人たちだらけの状況に、興味を一気に持っていかれる訳です。
その後、湊の担任の先生視点で描かれ、また別の角度から湊の言動が分かるように。
最初は、先生が胡散くて悪そうと思ってたし、こんな学校絶対に嫌だ。と思っていた私も、あれ?なんかちょっと状況違う?とさらに、頭の中が混乱していきます。
そして後半、湊自身の視点で描かれ始めると、タネが一気に明かされていくんですよね。
最初に張り巡らされていた伏線たちが、後半になるにつれてどんどんと回収されていくことの気持ちよさといったら。
あと、これは最低でも2回は見た方が良いですね。1回だけでは私は理解しきれなかったです・・・。
2回目を見ると、1回目とは違い、登場人物のその時の気持ちがわかっているから、また別の視点で見ることができて、より理解が深まって面白さも増しました。
ウソ、ウワサ、勘違いが事実を少しずつ変えていく怖さ。
・事を大きくさせないために事実ではないことを事実にしようとする学校
・自分の気持ちを知られたくないがために、嘘をついた湊や星川くん。
・根拠もないのにどこで聞いたかも分からないウワサをペラペラと喋る教師
・よく見てもいないのに勘違いで、保利先生が、湊を突き落としたと言っちゃう子どもたち。
けっして大きな罪を犯す訳じゃないのに、一人ひとりのちょっとした嘘や、うわさ、勘違いが一人の人生を狂わしていく様子がとても怖く感じました。
私自身にも、湊と同じくらいの歳の子がいるので、学校という場では子ども同士の間でもこんなこと、よくあることだろうなーと思って見ていました。(ここまで大それたことではなく、日常的なことで・・・)
まだまだ未熟な子どもたちの言ってることはどこまで本当で、どこまでが違うのか、親の私でも分からないことがあります。
ケンカになって話し合いになってもどっちが悪かったなんて実際のところはよく分からないことがほとんどなんじゃないでしょうか。
これは決して映画だけの世界じゃなくて、現実でも伝言ゲームのように、事実が少しづつ違う方向に進んでいって、全く違う事実が自分の知らないところで出来上がっているんじゃないかと思わずにいられなかったです。
そう考えると恐ろしいー
とりあえず、この映画を見て心に決めたのは、やってもいないことを「やりました」と言うことだけは絶対にしない。ということ。
話は少しそれますが、保利先生役の瑛太がやっぱり良い。
『最高の離婚』の時にも思ったけれど、彼が演じると、そのキャラクターの輪郭がはっきりとし、人間味が出る。ステレオタイプじゃない人物像を作れる人だなと。
この保利先生も、決して悪い先生ではないけれど、立派な先生ってわけでもないところがあちこちで感じられるし、キャラクターがきれいに収まりすぎていない感じが映画にもリアリティを与えていたように思います。
保利先生、組体操で倒れたからって、「それでも男かよー」は、ダメですよ。
誰も触れない二人だけの世界がそこにある。
この映画で最も印象的だったのが、湊と星川くんが廃電車で二人一緒に過ごすシーン。
キラキラしてるんです!眩しいくらいに。
星川くんが湊に手作りのおもちゃの作り方を教えてあげたり、パンをむしゃむしゃ食べながら、ゲームをする。二人で楽しそうに草むらを走り回る。
普段は、誰にも言えない秘密を抱えて孤独に生きている二人だけど、二人でいる時だけはそんなことも忘れてただ楽しい時間が流れていく。決して誰にも邪魔されない世界。
いじめや虐待、二人を取り巻く現実があまりにも厳しく灰色の世界なので、それと相反するかのように描かれる二人だけのシーンが、とても瑞々しくて、儚くて、美しかった。
湊役を演じた黒川くんは、小学5年生という多感な時期のゆれ動く複雑な心情をとても上手に表現していたし、
星川くんを演じた柊木くんも、明るく振る舞いながらも、どこか闇を感じさせる雰囲気を上手く出していて、すごく魅力的でした。
そんな二人が演じたからこそ、湊と、星川くんのシーンが一層輝いたのかもしれない。
まとめ
冒頭でも言いましたが、最初にこの映画を見た時は、やっぱりモヤっとしたものが残ったんです。
いじめ、虐待、LGBTQ、割とディープな問題提起をしながら、最後をああいう展開に持っていったことに、なんかすっきりとしないものがありました。
正直、問題提起した部分も何かしらの答えを提示してくれるかなと期待していたのですが、あえてそういった描写は省かれていて、「そこは何も解決しないんや」って思ってしまって。残念さが残りました。
まあでも、2回目を視聴した際に、この映画の本質はそこではないのかなとも。
振り返って見たときに、それよりも、子どもたち二人のキラキラした世界が印象に残り、結果的に良い映画だったなという感想に至りました。
実際、つづきが気になって仕方ないくらいストーリーの展開も面白かったですし。
この映画は、見る人によって色々な受け取り方のできる映画だと思います。感想も人によって全然違うかも?
そう言った意味では一見の価値ありです!ぜひご覧ください。
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※本作品の配信情報は2024年9月14日時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況については各動画配信サービスのホームページもしくはアプリをご確認ください。
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